脳梗塞になって失った〝途方もなく大きなもの〟と新米身体障害者の〝自宅生活における課題〟【真柄弘継】連載第12回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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脳梗塞になって失った〝途方もなく大きなもの〟と新米身体障害者の〝自宅生活における課題〟【真柄弘継】連載第12回

【連載】脳梗塞で半身不随になった出版局長の「 社会復帰までの陽気なリハビリ日記」163日間〈第12回〉

 

◆「歩けた=治った」は大きな間違い

 

■10月2日木曜日

タイムトライアル。

3分21秒。

 

先週は会社のことでいろいろなことを書いた。

私のように現役で働いている人が突然会社を長期で休むことになったら?

様々なことを考える。

育休や産休なら引き継ぎをしてから休みに入る。

それでも休んでいる間は会社の業務の事なども時には考えてしまうだろう。

引き継ぎもなく休んだら、それこそ心配事だらけである。

病気で会社を離れていて一番感じるのは疎外感ではないだろうか。

その意味では私の勤める会社、というか社長はそのような気持ちにならないよう、様々な配慮をしてくださる。

会議にオンラインで参加出来るように取り計らってくれたり、日々の業務でもなにかと私の考えを聞いて、一緒になって仕事をしている気分にさせてくれたりするのだ。

 

下肢切断で急性期病院とリハビリテーション病院で合わせて1年近く会社を休んでいる患者さんは、この先の雇用条件を心配していた。

脳出血で倒れて入院していた方は、警備員という仕事柄、身体が不自由で勤務を継続できないと退職されていた。

もう一人の脳出血で入院中の患者さん。

リモートでの仕事だそうで、会社は外資系だからか制度的にはしっかりしているからと、あまり困った感じはしない。

 

私はといえば、年内休職としたけど、復職してからのキャリアなどは心配していない。

いまも要所要所で業務にも関わっているから、それほど浦島太郎状態にはならないと思う。

それでも実際の業務に復帰して体力的に大丈夫なのかという心配はあるけれど。

いずれにしても、現役で働いている患者さんたちの心中は悲喜こもごもだ。

 

今日のリハビリのスケジュールは1時間の枠が三つ、それも昨日と一緒で足だけ。

二日間も手のリハビリがないのは初めてだ。

それにリハビリとリハビリの間隔が長く、これは私的にはダルいスケジュールだ。

リハビリがない時間はただただ歩きながら過ごしている。

変わらぬ風景の中をただ歩くのはつまらないからダルい。

そんなことを言っても始まらないから、気持ちを切り替えていこう。

 

自力で歩けるようになってはいるけれど、自分が歩くイメージが上手く伝わっていないように思う。

健康な人が歩くのとは明らかに違う私の歩き方。

杖を使って歩くとは言っても、ハイハイから歩けるようになった乳幼児より少し速い程度なのだ。

それに持続力もなく、300メートルくらいを30分かけて歩いた後は疲労困憊となる。

病院の中は身体障害者向けに凹凸のない廊下。

まわりのスタッフさんは神経を使って、我々の歩く邪魔にならないようにしている。

そんな空間でさえ時に躓いて杖を支えに立ち止まることがあるのだ。

だから、「歩けた=治った」は大きな間違いなのである。

健康な人より少し遅いくらいの速さで歩けるようになって初めて歩けた、と言えるのだ。

 

最初の足のリハビリで昨日練習した布団での寝起きを今一度練習する。

コツが掴めたのか昨日と違ってふらつくことなく寝起きが出来た。

明日の夜の自宅での就寝は一安心かな。

その後は筋トレマシンと腹筋トレーニングの新しい方法にチャレンジ。

昼御飯を挟んで午後イチのリハビリでは公道を歩く。

一昨日歩いた坂道の上級者コースを距離を延ばして歩いたら、所要時間が大幅に短縮されてびっくり!

けれど、その後に低い位置に腰を下ろしてから立ち上がろうとしたら、これがかなりの難しさ。

新たな練習課題が出来た。

最後も足のリハビリ。

杖無しで歩く練習をして、その後はしっかりとストレッチ。

1時間3コマのリハビリは今日も足だけだったから、指が固くなること!

自分で出来る指のストレッチでしのぐしかない。

 

明日は16時には病院を出る。

そこから土曜日の20時まではリハビリはお休み。

明日の夜は118日ぶりの自分の家での就寝。

夜中のトイレの回数を減らすのが課題。

明後日は早朝から車での移動。

トイレに行きにくいので、脱水状態にならない程度に水分摂取量を考えなければ。

都合4食を病院の外で食べるから、その分の薬を準備したら本日も早目の就寝。

 

10月3日と4日は一時帰宅で外泊。

家屋調査で分かった生活上の課題……リハビリで練習した成果はあるのか?

 

 

文:真柄弘継

(第13回「息子の結婚式に車椅子で参列はしたくない。その一念で歩けるようになったのだ!」につづく…)

 

◆著者プロフィール
真柄弘継(まがら・ひろつぐ)

某有名中堅出版社 出版局長
1966年丙午(ひのえうま)126日生まれ。1988年(昭和63)に昭和最後の新卒として出版社に勤める。以来、5つの出版社で販売、販売促進、編集、製作、広告の職務に従事して現在に至る。出版一筋37年。業界の集まりでは様々な問題提起を行っている。中でも書店問題では、町の本屋さんを守るため雑誌やネットなどのメディアで、いかにして紙の本の読者を増やすのか発信している。

2025年68日に脳梗塞を発症して半身不随の寝たきりとなる。急性期病院16日間、回復期病院147日間、過酷なリハビリと自主トレーニング(103キロの体重が73キロに減量)で歩けるまで回復する。入院期間の163日間はセラピスト、介護士、看護師、入院患者たちとの交流を日記に書き留めてきた。

自分自身が身体障害者となったことで、年間196万人の脳卒中患者たちや、その家族に向けてリハビリテーション病院の存在意義とリハビリの重要性を日記に書き記す。
また「転ばぬ先の杖」として、健康に過ごしている人たちへも、予防の大切さといざ脳卒中を発症した際の対処法を、リアルなリハビリの現場から当事者として警鐘を鳴らしている。

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真柄弘継

まがら ひろつぐ

現役出版局長

1966年丙午(ひのえうま)126日生まれ。

1988年(昭和63)に昭和最後の新卒として出版社に勤める。

以来、5つの出版社で販売、販売促進、編集、製作、広告の職務に従事して現在に至る。

出版一筋37年。業界の集まりでは様々な問題提起を行っている。

中でも書店問題では、町の本屋さんを守るため雑誌やネットなどのメディアで、いかにして紙の本の読者を増やすのか発信している。

 

2025年68日に脳梗塞を発症して半身不随の寝たきりとなる。

急性期病院16日間、回復期病院147日間、過酷なリハビリと自主トレーニング(103キロの体重が73キロに減量)で歩けるまで回復する。

入院期間の163日間はセラピスト、介護士、看護師、入院患者たちとの交流を日記に書き留めてきた。

自分自身が身体障害者となったことで、年間196万人の脳卒中患者たちや、その家族に向けてリハビリテーション病院の存在意義とリハビリの重要性を日記に書き記す。

また「転ばぬ先の杖」として、健康に過ごしている人たちへも、予防の大切さといざ脳卒中を発症した際の対処法を、リアルなリハビリの現場から当事者として警鐘を鳴らしている。

 

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